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川勝平太『富国有徳論』を読んで

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内容説明 コメント(7件)

冒頭から次のような言葉が出てきて、うんざりする。
 明治の指導者は日本百年の大計として富国強兵をかかげました。現代の観点からその批判をおこなうのはたやすいでしょう。しかし、その国是のもとに、日本は、ほかのアジアのほとんどの地域が植民地になるなかにあって、ひとり政治的独立をまもり、かつ経済発展に成功した非西洋諸国で唯一の国となりました。それはアジア(東洋)史における奇跡であり、世界史にのこる偉業です。(本書13頁)
 歴史を学ぶ意味は、過去から学び、現在においてよりよい指針を導くためである。過去を美化し、現代からの観点からの批判を「たやすい」から止めろというのが、およそ学者の言うこととは思えない。日本が「富国強兵」の国是のもとで、いかに多くのアジアの他の地域に苦痛を与えたかを踏まえた上で、「世界史に残る偉業」などと能天気に喜んでいる神経は理解に苦しむ。そしてまた、次のように言う。
 日本も明治維新で富国強兵にのりだし、東アジアに支配権をのばして大国化をめざし近隣諸国に功罪なかばするすさまじい影響を与えました。(本書15頁)
 さらりと書いてあるが、「盗人猛々しい」とはこのことである。たぶん筆者は、「侵略は悪かったが、鉄道などのインフラを整備し、教育を普及させた」とでも言いたいのであろう。しかし、これは、強姦犯が被害者に金を渡したのと同じであって、なんら胸を張れるようなことではない。
 この後、日本は富国有徳の国になるべきだとして、次のように言う。
 各国から憧れられ仰ぎみられる文明、それは富士山のごとき存在です。富士を英訳すればprosperous and civilizedです。「豊かにかつ廉直に生きること」――、それこそが現代の日本人に求められるすがたではないでしょうか。(本書19頁)

資料の原本内容

『富国有徳論』を読んで――川勝平太『富国有徳論』中公文庫
 冒頭から次のような言葉が出てきて、うんざりする。
  明治の指導者は日本百年の大計として富国強兵をかかげました。現代の観点からその批判をおこなうのはたやすいでしょう。しかし、その国是のもとに、日本は、ほかのアジアのほとんどの地域が植民地になるなかにあって、ひとり政治的独立をまもり、かつ経済発展に成功した非西洋諸国で唯一の国となりました。それはアジア(東洋)史における奇跡であり、世界史にのこる偉業です。(本書13頁)
歴史を学ぶ意味は、過去から学び、現在においてよりよい指針を導くためである。過去を
美化し、現代からの観点からの批判を「たやすい」から止めろというのが、およそ学者の言
うこととは思えない。日本が「富国強兵」の国是のもとで、いかに多くのアジアの他の地域
に苦痛を与えたかを踏まえた上で、「世界史に残る偉業」などと能天気に喜んでいる神経は理
解に苦しむ。そしてまた、次のように言う。
  日本も明治維新で富国強兵にのりだし、東アジアに支配権をのばして大国化をめざし近隣諸国に功罪なかばするすさまじい影響を与えました。(本書15...

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